REPORT活動レポート

2日間にわたるオンラインワークショップを開催しました!

活動レポート


8月9日・10日の2日間、ジャストラ!プログラムに参加する11地域から22名がオンラインでのワークショップに臨みました。その目的は、これまで実施してきた視察やインプットセッションでの学びに基づき、
①自地域における脱炭素に向けたビジネスモデル(事業構想)を実際に描いてみること、
②そのモデルを進めると誰にどんな影響が及ぶかを予測すること、さらに
③自地域で守り育てるべき「公正さ」とは何かを考えること、です。

以下、その3テーマで行われた各ワークの概要と、前提整理や質疑の内容を要約してお伝えします。


■ジャストラ!プログラムにおける事業構想の考え方と位置づけ(事務局より)

  • ⚫例えば、火力発電を廃止したとき、ひとつの新しい産業で同じ規模の雇用を代替するのは難しい。そもそも雇用のレジリエンスを高めるためには、サステナブルなビジネスを複数つくって分散すべきであり、脱炭素ビジネスはその中のひとつという位置づけである。

⚫本プログラムで検討する新事業は新電力などに限る必要はなく、結果的にカーボンポジティブにならなければよい。また、移行に際して、もともとあった不公正を正していく(女性やマイノリティ、配慮が必要な人たちを巻き込むなど)ことも意識してほしい。
 

■あらためて「公正さ」とはなにか(事務局より)
権力者の意思決定により不公正さが生じる場合がある。たとえば世界では、国が「脱炭素を進める」という意志決定をしたことによって火力セクターをはじめ数十万人が職を失っている現実がある。そこの公正さを保ちながらグリーンシフトを進めようというのが「公正な移行(ジャスト・トランジション)」の考え方。

⚫公正かどうかは個人間、労働者と企業、国と企業など、関係性に基づいて問われるべきもので、多様な文脈があり、かつ変容しうる。個人レベルでは、属性によって被支配的・従属的になりやすい人たちがいる。自分の地域ではどんな人が力を持ちやすいか、想像してみてほしい。各地域にはなんらかの権力構造があるはずで、そこにアクセスしやすいのが支配側、しにくいのが従属側。その壁を取り払えるような事業を創出できるかどうかがポイントだ。

⚫「公正さ」に正解はない。みなさんの地域はいま公正かどうか。これから実施しようとする事業を通して「公正さ」は増すかどうか。これらの問いに向き合うことが脱炭素社会への「公正な移行」の本質である。

 

  • ■各ワークの概要
  • ⚫ワーク1「地域経済の再構築にむけた事業構想を明確にする」:現時点で考えられる「2050年の地域のあるべき姿」およびビジネスモデル概要をワークシートに記入。事業主体、顧客、製品・サービス、とくに「顧客にとっての価値」を言語化する。

  • ⚫ワーク2「その事業を展開したときに起こり得る影響を考える」:ワーク1で考えた事業の展開に伴う良い影響・良くない影響・想定される問題・解決すべき課題などを言語化する。


  • ⚫ワーク3「自地域で守り育てるべき「公正さ」とはなにか考える」:自地域における「公正さ」とは、どんな状況や文脈を踏まえるべきか、その「公正さ」を守り育てるために何をするべきか。意見と理由を言語化し、ジャムボードを使ってディスカッションする。

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  • ■参加者の質問・意見・感想(一部)
  • ⚫公正さを考えるとき、地理的にも時間軸的にもどこで区切るのか。遅れてリスクが発生する場合もある。たとえば太陽光は今よくても将来的には太陽光パネル廃棄の問題がある。中長期的なリスクは不明のものも多い。 
  • ▷(事務局)まずは自分が活動する区域に絞ったほうがいい。時間軸は今から10年後と30年後では違ってくるが、ひとまず2050年という目安がある。「公正さ」は目的ではなく、他の目的のために公正さに配慮するという順序だ。

  • ⚫地域にはもともと輪をもって貴しとする伝統がある。ある意味それは「公正さ」だが、その「公正さ」を無視しないと新しいことは生まれない。議論の透明性を追求しても、どこまでいっても取り残される人はいて、そこに時間をかけているうちに地域は死んでしまう。やる気のない人たちを意識決定にどう取り込むかより、まず始めてしまってから後で公正を考えないと、新しいことは生まれないのではないか。 

  • ▷(事務局)地域の生態系を変えるという視点が必要ではないか。地域にヨソモノ(異物)が入ってきて動き回ると、新しいものが地域に少しずつ受け入れられていく。それを繰り返すと環境に適応できるコミュニティが生まれる。公正なコミュニティが不公正になるのではなく、固定化されたコミュニティが適応できるコミュニティに変わるということだ。

  • ⚫海外を視察して感じたが、「公正な移行」の議論の前提には「自立した社会」があると思う。日本の地方部にとっては遠い話だ。国からお金が降ってきている状態の中でいかに地域内を公正化しても、そもそもそれは自立的じゃない。事業開始後の公正さを担保しようという話はわかるが、それ以前の問題だという気がする。


  • ⚫行政は住民の機会格差・情報格差をなくしたいと考えて情報発信しているが、読んでくれない・理解してくれないことも多い。ロジックで公正さを語る側と感情的に「不公正」だという側の対立が起きてしまう。すり合わせるための会議体をつくると、今度はそこに参加するかどうかでまた情報格差が生まれる。それをどう乗り越えるが大きなポイントだと感じた。


  • ⚫火力発電をやめると雇用が減るのは目に見えてわかるが、見えにくいセクターもあるとわかった。たとえば漁師が自分で6次化までやると、仲卸や魚市場の売上減少につながり、いずれ漁協を保つのも難しくなるかもしれない。ジェンダー格差については、女性の参画を増やすのに必要なのはスキルアップだけでなく、「前に出る気持ち」の部分も大きいと気づいた。

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  • ふだんは目の前の仕事で忙しい事業者たちも、自身のビジネスが社会構造の変化にどうつながっているか、俯瞰的な視点から意識できる場として本ワークショップは設計されました。今後も2~3か月に一度の頻度で実施していくほか、講義主体のインプットセッションや現地フィールドワークも予定されています。