REPORT活動レポート

㈱脱炭素化支援機構をお招きして、オンライン勉強会を開催しました!

活動レポート


2023月11月27日(月)、ジャストラ!プログラム参加者を対象に、株式会社脱炭素化支援機構(JICN)をお招きした勉強会をオンラインで開催しました。同社が融資・出資する際の地域貢献度の評価の仕組み等を知ることで、今後の資金調達の参考にしていただくことを目的としたものです。
以下、JICNのプレゼンテーションの内容および質疑の抜粋・要約をお届けします。

■株式会社脱炭素化支援機構(JICN : Japan Green Investment Corp. for Carbon Neutrality)について

✔ 国の財政投融資および民間82社が出資して2022年10月に設立された株式会社。2050年カーボンニュートラルに向けて取り組む多種多様な事業に投融資の形で資金を供給。

✔ 前身となる一般社団法人グリーンファイナンス推進機構から体制を移行し、投資対象分野や規模等を拡大。日本全体の脱炭素化の加速に貢献。

✔ 支援対象は、自社又は他社の温室効果ガスの排出削減・吸収と社会経済の発展に貢献する事業で、分野や領域は不問。主として開発段階の後期以降を想定するが、脱炭素に資するスタートアップ企業への支援等も可能。

✔ 事業リスクやファイナンスニーズに応じ、優先株・劣後ローン・劣後債等のメザニンファイナンスに加え、普通株等の出資も可能。出資期間は契約締結年度を含めて最長20 年程度を想定。

✔ 現在までの支援決定公表済み案件は以下の通り。

■地域活性化・地域貢献の効果測定=RIA(Regional Impact Assessment)について

✔ JICNが支援検討する際の指標のひとつが「地域貢献」であり、その評価手法がRIA。
RIAは、主としてFIT制度を利用した地域での再生可能エネルギープロジェクトの評価法として作成されたもの。FIT再エネ以外の地域での脱炭素事業については、RIAの主旨をふまえて適宜修正していく必要がある。


✔ 定量的な①「経済効果」、②「雇用(人数)効果」、および③定性的な「その他の効果」の3つの視点から支援先と話し合って評価していく。
定性的な部分では、プロジェクトのキャッシュフローに直接反映されない経済効果(関連産業、地元資源活用など)やプロジェクトを通じた人材育成・活用のほか、地域の事業者・金融機関が主体的に参加できるか(地元主導のプロジェクトになるか)なども重要な評価ポイントになる。

✔ 評価手順は以下の通り。経済効果は、プロジェクトを通じて地域内にどれだけお金が還元されるかを計算。

■質疑応答

Q:一地域に限定されないプラットフォームビジネスはどういう基準で地域貢献を測るのか。
Aプラットフォームビジネスの場合でも、プラットフォームを通じて、地域に貢献する様々なビジネス・事業の推進に寄与するような場合は、その点を定性的に評価する。また、社会経済の発展への貢献は、地域貢献に限られず、技術イノベーションや産業振興など様々であり、これらを多面的に評価している。

Q:私たちの目的は地域内に経済循環を興すことであり、脱炭素は副産物。自地域では再エネも10割ではなく3割程度が合理的と判断しており、経済合理性のないレベルの脱炭素を求められると疲弊する。JICNの支援にあたり脱炭素はどのくらい主要命題なのか。
2050年カーボンニュートラル実現に貢献することが条件であり、対象事業による排出量がゼロであることを条件とするものではない。支援基準の中に「収益性の確保」という項目が含まれているため、事業として経済合理性が必要。経済と環境の好循環を作り出しながらカーボンニュートラルに挑む事業や企業を支援していきたいと考えている。

:(自地域の再エネ事業会社について)これまでは地元の出資者のみで、地域外にステークホルダーを広げないようにしてきた。仮にJICNの出資をうけた場合、意思決定にどこまで関与するのか。
:毎年利益が出る事業には、出資ではなく融資(劣後ローン)のほうが向くと思われるが、融資の場合は、通常は最低限の承諾事項を定める(プロジェクトに重大な変更を加える場合など)。出資の場合は、議決権を持たない優先株の形をとり、ガバナンスには関与しない形態もあり得る。

:海洋の生態系保全に着手しようとしている。支援基準に生物多様性の観点があると思うが、どのくらい重要視されているのか。
政策的意義の観点から、温室効果ガス削減や吸収に資することを大前提として、生物多様性や資源循環等環境保全上の効果についても、大きいものであれば、審査の際に評価している。なお、収益性の確保も同時に求められるため、相当の創意工夫が必要になると思われる。

:エグジットの際は地元企業のバイアウトも想定とのことだが、どんなイメージか。
:実際には、(事業開始時点から利益が発生して継続していく)プロジェクト案件の場合はJCINが出資して後に売却というより、劣後ローンで定期的に返済してもらうほうが馴染むと考えられる。一方、上場を目指すようなスタートアップの場合は、上場時点がひとつのエグジットのタイミングとなる。そのような大まかな方向性は想定されるが、具体的には案件ごとに話し合って決める。バイアウトの例としては、地域の太陽光発電であれば地元のデベロッパーが買収した例も過去(グリーンファンド時代)にはある。また、風力発電が安定稼働開始後、採算が読める優良資産になったら市民ファンドに少しずつ売却する、という計画中の例もある。

以上