REPORT活動レポート

徳島県上勝町でフィールドワークを実施しました!

活動レポート

2024年5月24日~26日、ジャストラ!プログラム4回目となるフィールドワークが徳島県上勝町で行われました。今回参加したのはGroup1・2およびコミュニティメンバーより8団体14名(ほかオブザーバー、事務局など含め計22名)。日本初のゼロ・ウェイスト宣言自治体として知られる上勝町がこれまで経験してきた地域社会のトランジションを学ぶとともに、将来の望ましい地域の在り方を町民と一緒に議論するワークに臨み、実り多い3日間を過ごしました。

【上勝町とゼロ・ウェイスト宣言について】

徳島市中心部より南東へ車で約1時間、人口1,400人弱(高齢化率52%)の山間の町。平地がほとんどなく丘陵斜面には棚田が広がる。地理的制約などで回収車が走れないためゴミは野焼きされていたが、1990年代後半にその問題が深刻化。2003年、町内のゴミをゼロにすることを目指し、日本初のゼロ・ウェイスト宣言を行なった。以来、ゴミの徹底分別による資源化を町民の暮らしの隅々まで浸透させ、2020年までにゴミのリサイクル率80%を実現。その取り組みは日本全国のみならず世界からも注目を集める。2020年には宣言を改訂し、「未来の子どもたちの暮らす環境を自分の事として考え、行動できる人づくり」を重点目標として掲げた。ゴミゼロを目指すだけでなく、自分たちの暮らしを豊かにすることを第一の目的とし、リサイクル率以外の指標開発にも着手。企業との連携によるゴミを出さない商品の開発や、ここでの暮らしを通じた深い学びを提供する人材育成プログラムなど、「上勝のゼロ・ウェイスト」の追求を続けている。

■1日目(5/24)

午後、参加者たちは徳島空港に集合し、ボランティアタクシー(構造改革特区として市民が自家用車で有償の輸送サービスを行う取組み)に分乗して上勝町のゼロ・ウェイストセンターへ向かいました。ここは町民が45種類に分別したゴミを持ち込む町内唯一のゴミステーションがある場所です。一行が宿泊する「HOTEL WHY」も同じ敷地に併設されており、宿泊者も滞在中のゴミの分別を自分で行うことでゼロ・ウェイストを体感できます。チェックイン後、センターのスタッフからゼロ・ウェイストの仕組みを詳しく説明していただきました。

△ゴミステーション、交流施設、宿泊施設が同じ場所にあるゼロ・ウェイストセンター。ゴミは洗って乾かしてから持ち込むため、一帯は全くにおいがしません。

 

△ゴミは40種類以上に分別。それぞれ資源としてどこで何に生まれ変わるか、1キロあたりいくらの収入(処分の場合は支出)になるかが明示されています。

 

△ホテル滞在中はゴミ自体をなるべく減らすため、部屋に持ち込む備品も最小限に。石けんは予め使う分だけカット。

なお、この日の午前中は、オプションとして町内の農家さんや町民のお宅を訪問する機会も設けられました。上勝町は「つまもの」(日本料理を彩る季節の葉や花、山菜など)の生産でも知られます。高齢者や女性も活躍できる仕事として1980年代に産業化。「葉っぱビジネス」と呼んで振興を図り、現在では約100軒の農家が300種類以上を生産しています。

△(左)県外から移住した百野大地さんは「葉っぱ」の生産農家。(右)中村修さんのお宅ではこの地域における昔ながらの暮らしぶりを拝見。

 

■2日目(5/25)

午前中は、「世界と繋がる上勝~INOWプログラムを事例に~」と題したセッション。今回のフィールドワークの受け入れホストである合同会社RDND(アールデナイデ)代表の東輝実さんから、上勝町のゼロ・ウェイスト活動について、これまでの経緯や現在の取り組み、今後の方向性などについて説明を聞きました。リサイクル率80%を達成した2020年、町民たちが今後について議論した結果、ゴミゼロだけでなく「自分たちの暮らしを豊かにする」ことを軸にしたゼロ・ウェイストの再定義につながり、企業との連携や人材教育など新たな活動が始まっているとのこと。ジャスト・トランジションの文脈では、そうした活動のプロセスに高齢者や女性、若者を含む多様な人たちが参加できることが大切だ、という東さんの言葉に参加者は頷いていました。

△上勝出身の東さんは、2011年に町へ戻って起業。さまざまな事業を運営し、上勝町ゼロ・ウェイスト推進協議会事務局も務めています。

続いて、ゼロ・ウェイストをベースにした人材育成の取り組みのひとつ、INOW(イノウ)プログラムの紹介がありました。人手不足の飲食店が町外の若者に仕事を手伝ってもらう代わりに食事と宿泊場所を提供し、上勝の暮らしを体験してもらうインターンシップから発祥したもので、現在では町内の資源を活用した多様なコンテンツが用意されています。ただ観光に来るのではなく、ここに住む人たちの暮らしを体験してもらうという主旨のもと、参加者に深い学びと内省の機会を提供する内容で、世界中からゲストが訪れているということでした。

△INOWプログラムを担当する渡戸香奈さん(右)とヴァン・デ・ヴェルデ・シルさん。プログラム名は「I KNOW(私は知っている)」という英文と「家に帰ろう」という意味の上勝の方言から名付けられたそう。

午後は、小中学生も含む上勝町民28名を交えたワークショップが行われました。テーマは「10年後、自分の地域に増えてほしいもの、減ってほしいもの、変わらずあってほしいもの」。全50名以上が5グループに分かれ、ディスカッションした内容をみんなで共有しました。

△ジャスト・トランジションの観点から、こうありたい未来を目指す過程で「誰が不利益を被る可能性があるか」なども話し合いの観点に。

 

■3日目(5/26)

△コンポストの説明を受ける参加者たち

参加者たちは、ホテルチェックアウトの前、生ゴミのコンポストの見学および宿泊中に出たゴミの分別体験を行いました。その後の振り返りセッションでは、本プログラムが終了する9月末までに参加者それぞれの地域でどんな状況をつくりたいか、その先に何を目指すのかを考え、言語化するワークを実施。参加地域・団体によって目先のアジェンダが異なるなか、本プログラムで目指す「公正な移行(ジャストなトランジション)」とは何か、各自があらためて解像度を上げる機会となりました。

△振り返りセッションの様子

 

■上勝町フィールドワーク参加地域・団体

【Group1・2】

北海道下川町 下川町ジャストラ研究会

宮城県石巻市  一般社団法人フィッシャーマン・ジャパン

三重県尾鷲市 一般社団法人つちからみのれ/尾鷲ヤードサービス株式会社

島根県海士町 交交株式会社

青森県八戸市 株式会社バリューシフト

大分県臼杵市 うすきエネルギー株式会社

熊本県阿蘇地域 NPO阿蘇あか牛研究会

【コミュニティメンバー】

デロイトトーマツコンサルティング合同会社