REPORT活動レポート
J.P.モルガンに聞く「ジャスト トランジション」の意義
「ジャストラ!プログラム」は、グローバル総合金融サービス機関、J.P.モルガンのグラント(助成金)によりNPO法人ETIC.が事務局となって運営しています。2024年3月1~3日に北海道下川町で行われたフィールドワークにオブザーバーとして参加したJ.P.モルガンの佐野友彦さん(市場調査部共同部長)に、お話しを聞きました。
――御社の日本での社会貢献と「脱炭素社会への公正な移行」とは、どのように関係しているのでしょうか?
世界的な流れであるカーボンニュートラルやグリーントランスフォメ―ションをうまく材料として使いながら、今ある地域課題の解決につなげること、が大切です。そのためには地域に深く関わっている中小企業がメインプレーヤーになると考えています。彼らが中心となって地域の課題を洗い出し、その解決を含む地域の向かうべき姿を描き、更にそこへトランジションしていく過程をいかにインクルーシブなものにしていくか、が重要です。ETIC.さんとは本件について時間をかけて話し合いを続けさせていただいています。社会貢献と脱炭素社会への移行は別々のものではなく同時に考えること、お互いが足かせになるのではなく、相乗効果が生まれるように丁寧に議論を重ねることが公正な移行であり、それは社会貢献になるのではないでしょうか。
――インクルーシブとは、取り残される人がいないよう様々な立場の人の声を聞くということですね。
インクルーシブとはあらゆる立場の人が議論に参加するということ。現時点で地域の未来を考える場に参加できない・していない方々がいるはずです。その理由は社会の構造上の場合もありますし、情報が届いていない、声が届かないと思っている、など様々でしょう。よりレジリアントな地域への移行には、いま議論に参加していない方々が参加することが大切です。気候変動は社会の中で弱い立場にある方たちへの影響が最も大きいものです。グリーンな社会への移行によって縮小される産業に従事する方々も一緒に議論に加わり、地域全体でトランジションしていこうということです。
――インクルーシブ=ジャスト(公正)という理解でしょうか。「公正な移行」の解釈は様々のようです。
「公正な移行」はもともと、2009年のCOP15(第15回国連気候変動枠組み条約締約国会議)を受けてITUC(国際労働組合総連合)が提唱した概念で、脱炭素社会への移行に伴う雇用の移行・創出の重要性を強調したものですが、日本ではそこに捉われすぎないほうがいいと思います。「取り残される人たちのケア」は本来、国だけでなく自治体、企業、コミュニティ、すべてのレベルで考えるべきもの。各地域における「公正さ」は国が決めるのではなく、地域それぞれの「公正な移行」があるはずです。もちろん、グリーンでサステナブルな方向に向かうことは必須ですが、ジャストラ!では地域がそれぞれの「公正さ」を考え、「ジャストトランジション」の定義自体をみんなで見つける旅をしている事に魅力を感じます。
――今回、下川町フィールドワークに参加されていかがでしたか?
フィールドワークはとても大事だと思いました。いろいろな地域の人たちがアイデアを持ち寄り、学び合う場はすばらしいし、なにより同じ志を持った人たちのネットワークができることが重要です。フィールドワークは今回で3回目となり、みなさんの絆がとても深まっているように感じますね。その絆は今後も継続し、日本におけるジャストトランジションを牽引していくものと期待しています。