REPORT活動レポート

インプットセッションを開催しました!

活動レポート


2023年7月20日(木)、ジャストラ!プログラム参加者を対象に、ゲストスピーカーを招いたインプットセッションをオンラインで開催しました。
8月実施予定の島根県海士町でのフィールドワークを前に、カーボンクレジットのマーケット市況と創出事例、グリーンビジネス・脱炭素系の事業事例などを学ぶことが目的です。
以下、ゲストお二人によるインプット内容を抜粋・要約してお伝えします。

カーボンクレジットのマーケット市況と創出事例
および脱炭素ビジネス事例

(三ツ輪ホールディングス株式会社 取締役 大澤 哲也氏)

  • 三ツ輪ホールディングスは練炭・石炭販売で創業、現在はエネルギー全般を取り扱う非上場企業。
  • 温室効果ガス削減への対応は、見える化(計測)し、削減し、それでも出てしまう分はオフセット(森林を育てるなどによりCO2をマイナスにして相殺)するという3段階がある。
  • オフセットするためのCO2の価格付けは2種類。ひとつはキャップ&トレード方式で、いわゆる排出権取引。自社の排出量を目標より減らせたら差分を企業間で取引する。日本では導入検討中。 

 

  • もうひとつがベースライン&クレジット方式。ボイラーや太陽光発電施設など設備単位で排出量が見通しより減ったとき、差分をクレジットとして認証する仕組み。これがカーボンクレジット。申請して認証されたカーボンクレジットをエンドユーザー(企業)に販売し、ユーザーは自社の排出量と相殺することで最後にクレジットは消える。この市場が今後5年で4倍くらいになる見通し。

カーボンクレジットには、コンプライアンスクレジット(国が認める)とボランタリークレジット(民間の評価機関が認める)がある。日本のJクレジットは国が認めるクレジット。

(Jクレジット制度詳細はこちら:https://japancredit.go.jp/about/outline/

 

  • Jクレジットをつくるときは購入する企業側の目線が必要。企業によって重視ポイントは違う。今は相対取引だが今年(2023年)10月東証に市場が開設される。

  • 森林でのJクレジット創出には、森林計画の策定、申請、モニタリングなどのプロセスがあり、いずれも費用がかかる。先行投資に躊躇する自治体もあるが、事前に地元企業からの資金調達に成功している例もある(熊本県小国町など)。

  • 地方のガソリンスタンドが脱炭素を進める際の論点は、
    ①自社が排出するCO2削減(太陽光パネル設置など)と、
    ②商品であるガソリン自体の脱炭素化(合成燃料など)。
    設備を変えずにできるが受け身的なので、オフセットしながらという事例も増えている。

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  • クレジットをつくっても、地域のためにどう使うかわからないというケースも多い。三ツ輪ホールディングスは他社と協力して、そこをデザインしようとしている。購入した企業に地域の自然資源の維持に関わってもらうとか、企業以外に個人にも購入してもらい関係人口の創出につなげるなど(Jクレジットは個人に販売できないが所有権をNTF化して販売は可能)。地域のビジョンにあわせた設計は可能だ。

公正な形で進める気候ネットワークの事例

(認定NPO法人気候ネットワーク事務局長 田浦 健朗氏)

  • 気候ネットワークは1998年設立の環境NGO。国際、国、自治体・地域、さまざまなレベルで取組みを実践し、活動の柱である政策提言に反映させている。
  • 2021年3月に「2050年ネットゼロへの道すじ」という提言を発表し、日本が 2050 年に温室効果ガス排出を実質ゼロにする目標を達成するために、実施すべき10の重要政策を提案。その中のひとつに「公正な移行」を位置づけている。
    (詳しくはこちら:https://www.kikonet.org/info/publication/net-zero-2050

 

  • 地域レベルでは、当初から「脱炭素の地域づくり」に注力し、市民所有にこだわった再エネを進める。京都では2000年に、「きょうとグリーンファンド」を立ち上げ、市民が寄付をして設置する「おひさま発電所」(太陽光の市民共同発電所)の普及を進めてきた。保育園・幼稚園・福祉施設などこれまで25機を設置。それぞれ規模は小さいが、地域の環境活動の拠点となっている。

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  • FIT導入後は(一社)市民エネルギー京都を設立。京都市の施設の屋根を20年間無料で借り、融資と市民出資で資金調達して太陽光発電施設を設置。売電収入により出資者には1.5倍のリターンが出ている。こうした仕組みが各地に広がった。

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  • 福知山市では「たんたんエナジー株式会社」という電力小売り会社も共同で設立。CO2ゼロの電気を地域の公共施設や学校などに供給している。また、オンサイトPPA方式で市内の施設5か所に太陽光発電・蓄電池などを導入し、市は初期費用をかけずにこうした設備が導入できている。そこに市民出資も募っているのが特徴。募集はすぐ埋まり、市民の関心は高い。

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  • 再エネは環境負荷がゼロではないし社会的コストもかかる。地域で再エネを進める際には地元の人々が正しい情報に基づいて判断できるような対話・情報共有の場が必要で、私たちはそのためのツールも提供している。また、地域資源には文化・人材・組織も含まれる これらをうまく温暖化対策に生かすべきだ。

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  • 多くの国が温暖化ガスを削減しつつ経済成長を遂げている。欧州では脱炭素が雇用や地域活性化につながるという考え方になっているが、日本ではいまだ脱炭素=経済成長を阻害という考え方が残る。日本では、欧州のようなEU全体での「公正な移行」推進の制度・仕組みができていないので、地域レベルでまずは取り組む必要がある。

こうした情報をしっかりインプットした後、参加者のみなさんはグループセッションに臨み、有意義なディスカッションを行いました。