REPORT活動レポート
海外視察(デンマーク・ロラン島)報告会を開催しました!
5月8~12日、ジャストラ!プログラムGroup1メンバー5地域から13名のみなさんがデンマークへの視察に参加しました。コペンハーゲンとロラン島にて多数の施設や事業者を訪問。見学や対話などを通じて多くの学びを得る機会となりました。
その内容をジャストラ!コミュニティ内で共有するため、6月1日にオンラインにて報告会を開催。オブザーバーを含めて50名以上が参加する盛況となり、本プログラムのテーマ「公正な移行」への社会的関心の高さがうかがわれました。
この記事では、その報告会の内容を抜粋・要約してお伝えします。
なお、ジャストラ!プログラムではGroup2およびコミュニティメンバーの募集を随時行っていますので、関心のある方はお問合せください。
*海外視察に参加したGroup1のみなさん
北海道下川町 下川町ジャストラ研究会
宮城県石巻市 一般社団法人フィッシャーマン・ジャパン
三重県尾鷲市 一般社団法人つちからみのれ
島根県海士町 交交株式会社
徳島県上勝町 合同会社RDND
【プログラム責任者(NPO法人ETIC.松本)より視察の概要説明】
・視察地のデンマークは人口600万人弱(千葉県と同じくらい)、ロラン島の人口は6.5万人。日本の市町村レベルと比較しやすい規模である。
また、デンマークは成熟した民主主義社会として知られ、「公正な移行」でも世界に先行している(例:カールスバーグ、LEGOなど世界的に有名なデンマーク企業12社が政府に対し「公正な移行」を求める共同声明を発表)
・デンマークはオイルショック以降、自転車普及に取り組んできた。コペンハーゲンは自転車専用の橋があるなど、自転車で移動しやすい都市交通インフラが整備されている。自然と市民が運動をするようになり、医療福祉の費用負担も減り一石二鳥の環境が実現。
・ロラン島は1980年代後半に造船業が撤退して苦境に陥ったが、地元農民が中心となって風力発電を中心とする経済圏形成に成功した(6月8日公開「『公正な移行』とは?~世界の動向」も参照)。一時は原発建設の話もあったが、住民の反対もあり、建設予定地だったところに風力発電施設ができている。
・島内でとれたワラを燃やして利用する地域熱供給するシステムが整備されている。 畜産が盛んだったが、酪農畜産への風当たりが強まる中、海の資源活用に注目。水産業のあり方を変えようとしている。
・島には移住者も多く、2021年から始めた移住者のfacebookグループ登録は現在500人、うち2割がデンマーク人。コミュニティでサポートし合っている。 個人的な印象としては、国からの情報提供の透明性が高く、短期的利益だけでなく常に次世代のことを考えるカルチャーがあると感じた。
【視察の感想1:RDND(上勝町)】
・「公正な移行」とは、何をやって幸福を作っていくかということ。(ロラン島の事例を見て)地域の人がやってきたことの先にトランジションがあったのだと思う。トランジションするために「人々をどう巻き込むか」ではなく、「こういう未来をつくりたい」という話が先であり、そこに巻き込まれる形であるべきだと感じた。
・視察先で、「日本からはたくさんの視察が来るが、何も始まらないし何も変わらない」と言われ、悲しかった。学びを伝播させるためにもこのメンバーがつながりつづけ、概念を共有するのが大切。
・自地域では、衣食住にかかる脱炭素情報の提供や、ゼロ・ウェイストセンターを活用した情報発信など、既存のプログラムをブラッシュアップしながら取り組みたい。
【視察の感想2:交交(海士町)】
・個人的には明治政府の欧米視察団が受けたのと同じくらいの衝撃を受けた。いちばんの気づきは、「公正な移行」の前提に「自立」があるということ。個人・企業・地域・国家それぞれが自立しているからこそ、移行に対して自ら適切に判断(投資)できる。この状態をまずつくるのが大事だ。
・自地域では、①(公的資金に頼らない)自主投資による太陽光発電、②小型風力発電機組み立て工場、③余剰電力の水素化&代替燃料化、などを構想している。
・さらに日本全国の公正な移行に向けて、「ジャストラ基金」や「ジャストラアカデミー」がつくれないか?大企業にも参画してほしいと考えている。
【視察の感想3:つちからみのれ(尾鷲市)】
・1週間の視察で自分の価値観に変化など起きないと思っていたが、心が震える7日間だった。国の意思決定が町レベルまで浸透しているデンマークで、あらためて民主主義という言葉の意味を考えた。
・これまでいろんな仕掛けをしてきて、60年かけて作ったものは60年かけないと変えられないと思っていたが、もしかしたら違うかもと思い始めている。たくさんの仲間と一緒に自地域の将来について議論を始めたい。まずは自分のチームから変革し、自治体へ波及させたい。
・具体的には、今年3月に開設した子どもたちの居場所を多世代型に変更するなどしたい。また、今後スタートする完全オフグリッドのキャンプ場を皮切りに、火力発電が撤退した尾鷲で新しいビジネスを創出していきたい。
【視察の感想4:フィッシャーマン・ジャパン(石巻市)】
・視察前は、「公正な移行」を通じて水福連携やジェンダー配慮、外国人就労などを実現したいと思っていたが、視察して水産業の文脈だけで考えていてはダメだと気づいた。地域の産業をどう持続可能なものに置き換えていくか、と目的を定義しなおし、その中で水産業の挑戦の幅を広げたい。
・具体的にはサステナブルツーリズム(海業)、サステナブルシーフード、船の電動化など再エネの取組みを水産業が先導するなど。それには水産業以外の人たちも巻き込まないといけない。
・デンマークで学んだことは、教育や対話の必要性。違う意見を認め合い、「話してよかった」を積み上げていくことが大事。また、市議会議員が気候変動対策を当たり前のように話しており、地域内で課題が共有されている。これから自分たちも勉強して地域内で課題感を共有していきたい
【視察の感想5:ジャストラ研究会(下川町)】
・デンマークには、様々なファクターがつながりあって国の「自立」を支えるシステムが存在すると感じた。
・例えば、学校で脱炭素社会について教え、子どもがそれを家に帰って多世代で共有しているという。それを可能にしているのがみんな15~16時には帰宅できるライフスタイルだ。また、ボランティアで移住者の交流グループを運営している人をはじめ、二足三足のわらじは当たり前と聞いた。つまり、住民が地域づくりに参加する時間が確保されている。
・デンマークの面積は北海道の半分くらい。そんな小国が世界の中でどう存在感を発揮していくか、必死に考え議論してきたのだと思う。その結果が国の方針となって明確に示されている。下川でもいろんな関係者の人たちと一緒に、下川らしい好循環を生み出すシステムを作っていきたい。
ジャストラ!プログラムではGroup2およびコミュニティメンバーの募集を随時行っていますので、関心のある方はお問合せください。