REPORT活動レポート

三重県尾鷲市でフィールドワークを実施しました!

活動レポート

2023年10月27日~29日、ジャストラ!プログラムのフィールドワークが三重県尾鷲市で行われました。5月のデンマーク視察に続く2回目の現地訪問となったこのフィールドワークには、5地域から9名が参加。火力発電所が撤退したことで、まさに経済構造のトランジション模索の最中にある尾鷲の現状を視察しました。

尾鷲側では、ジャストラ!プログラムにGroup1として参加する「一般社団法人つちからみのれ」、および同団体と連携する「おわせむかい農園」がホストとなり、自団体の活動紹介のみならず様々な分野で活躍する地域の人々から学びを得られる内容を企画してくださいました。

【尾鷲市について】
三重県南部、紀伊半島の東側(東紀州地域)に位置。人口は1959年3.5万人のピークから減少を続け、現在は1.6万人。市面積の9割以上を森林が占める。伝統産業は林業と水産業。高度経済成長期に工業立地化を進め、中部電力三田火力発電所が1964年に稼働開始。以来、同発電所は裾野の広い中核産業であり続けたが、2000年代に入って徐々に稼働が低下、2018年には撤退が発表された。跡地の利活用については市と中部電力などが「おわせSEAモデル」として検討中。

【一般社団法人つちからみのれ】
尾鷲商工会議所経営指導員や集客交流施設の立ち上げや運営を務めた伊東将志氏がファウンダーとなり、2021年に設立された団体。尾鷲市向井地区を起点に自然豊かで持続可能な地域づくりを目指す。2023年より向井地区で多世代が集う場「むむむ。」を運営(日本財団「子ども第三の居場所」事業採択)。他に、NPO法人G-netの「ふるさと兼業」地域パートナーとして紀伊半島の企業・団体と外部人材のマッチング・コーディネート等も手掛ける。

【おわせむかい農園】
尾鷲市向井地区を中心とした耕作放棄地を利用して2018年に開園。ブルーベリーや特産トウガラシ「虎の尾」などを生産する。2023年8月には園内にキャンプ場「minore」を開業。運営会社である尾鷲ヤードサービス株式会社は、もともと火力発電所関連分野で電力会社と長らく取引があった。発電所撤退により経営判断を迫られた社長の岡文彦氏は、業態転換して尾鷲で事業を継続することを決意。「鉄から土へ」をスローガンに未経験からの農業や耕作放棄地活用事業に挑戦中。岡氏は一般社団法人つちからみのれ理事も務める。

■1日目(10/27)
集合は津駅。車に分乗し、高速道路で約1時間かけて尾鷲へ。道中、ホストから地域の概況を聞きつつ、海と山が迫る尾鷲独特の地形を体感。尾鷲到着後は、漁港や水産加工業者などを訪問。
夕刻、「おわせむかい農園」到着。園内の高台にある「minore」キャンプ場にて、火力発電所撤退跡地を見下ろしながら、地場の食材を使ったバーべーキューを囲んで交流・意見交換。
<尾鷲に入る手前、銚子川の河原に降りる参加者たち。花崗岩でできた土地であることがよくわかる>

<水産加工事業者を訪問。こちらで夕食用の干物などを調達>

<漁港にて。つちからみのれの伊東氏(左)、おわせむかい農園の岡氏(右)とそのご親族で漁師の岡氏(中)>

<minoreキャンプ場は電気・水道なし。水は山から引き、電力は太陽光。完全オフグリッドを目指す。広い園内を移動するカートもソーラーで動く。眼下に火力発電所の撤退跡地を望む>

■2日目(10/28)
朝、市内南部の九鬼地区へ移動。市役所水産農林課長の芝山氏の案内で、林業x生物多様性の共存を目指すモデルゾーン「みんなの森」を見学。その後、同地区沿岸にある青のりの陸上栽培施設(シーベジタブル)見学。
向井地区に戻り、つちからみのれが運営する多世代交流施設「むむむ。」で開催中のイベントを見学。午後は、市内で介護事業・障がい者福祉事業などを展開する特定NPO法人あいあい代表・湯浅氏から話を聞く。夕刻はキャンプ場に戻って薪割り体験など。夜は尾鷲駅周辺市街地の飲食店にて交流・意見交換。

<朝食は地元のおかあさん手作りのおにぎりと惣菜。地域の活動はこうした人々にも支えられている>

<ヤフーの企業版ふるさと納税で整備されている「みんなの森」>

<「むむむ。」は子どもから高齢者まで多世代の居場所。この日のお絵描きイベントにも多世代が参加していた>

■3日目(10/29)
つちからみのれが事務所を置く市内の旧家にて、参加者全員による振り返りおよび今後のジャストラ!プログラムの進め方についてディスカッション。

火力発電所の撤退というシンボリックな出来事を契機として、産業構造の変化(トランジション)が起きようとしている尾鷲市ですが、ジャストラ!プログラムの参加団体はその地域ごとに異なる背景・文脈でトランジションを試行しています。
このプログラムでは何を共通項として共に学び、それぞれのトランジションを公正な手法で加速していくためのビジネスモデルに落とし込めるか。こうしたフィールドワークと対話を積み重ねながら模索していきます。

■尾鷲フィールドワーク参加地域・団体
宮城県石巻市/フィッシャーマン・ジャパン(Group1)
島根県海士町/交交株式会社(Group1)
徳島県上勝町/合同会社RDND(Group1)
大分県臼杵市/うすきエネルギー株式会社(Group2)
青森県八戸市/株式会社バリューシフト(Group2)

ジャストラ!プログラムではGroup2(国内視察に関して補助あり)およびコミュニティメンバーの募集を随時行っていますので、関心のある方はお問合せください。